練り切りのオリジナルデザインの考え方
今日は和菓子のオリジナルデザインの考え方について書きたいと思います。
こちらの記事は以前のブログで掲載した物を再編集したものになります。
この方法は教えられたわけではなく、私がやっているやり方を文章で説明したものなので正しいやり方かどうかはわかりません。
実際は書いてある通りにキッチリしているわけでもなくイメージでしていたりするのでわかりにくい部分があるかもしれませんがご了承ください。
和菓子のデザインはモチーフを和菓子化する、イメージを和菓子化するの2パターンあると思います。
その2つとも大まかな流れとしましては
①モチーフを決めるまたは大まかなデザインを考える(デザイン画を描く)
②モチーフの特徴を展開していくつかのキーワードにする
③必要なキーワードをチョイスしたり変化させたりして和菓子の技法に当てはめる
をやっていく感じになります。
言葉で書くとわかりにくいですが順に説明していきます。
まずはモチーフから作る方法を説明していきます。
①モチーフを決めるまたは大まかなデザインを考える(デザイン画を描く)
今回はわかりやすく桜、水仙で行きたいと思います。
②モチーフの特徴を展開していくつかのキーワードにする
モチーフの特徴を箇条書きにしていきます。
桜の特徴
・花弁の色が薄桃色
・花弁の数が5枚
・花弁の形がハート型
・木に咲く
水仙の特徴
・花弁の色は白(種類によって違うが今回は白)
・花弁の数が6枚
・ラッパ型の花弁
・葉っぱがニラ似
③必要なキーワードをチョイスしたり変化させたりして和菓子の技法に当てはめる
上の特徴からどれを採用するか決める
(流れを先に紹介するので技法の紹介は後程)
思いつく特徴を全部詰め込んでも良いのですがそうすると逆に作りにくかったり、伝わりにくい物になる場合があります。
※ここで一番気をつけなければいけないことは、外してはいけないキーワードがあると言うことです。
単純化するにあたってそれを無くしてはそのモチーフに見えなくなると言うキーワードです。
今回桜で言うと
・花弁の形がハート型
水仙で言うと
・ラッパ型の花弁
です。
他の特徴はキッチリ作らなくても大丈夫ですがこの二つは外して作るのは難しいのではないでしょうか。
画像付きで説明したいと思います。
まずは桜から
古典型です。
・花弁の色が薄桃色
・花弁の数が5枚
・花弁の形がハート型
のキーワードでできています。
そのままストレートに作ると発想は被りオリジナルとはいいがたいものになります。
なのでチョイスする、変化させると言う工程が必要となるのです。
・花弁の形がハート型
を外した物を作ってみます。
桜には見えなくなりました。
・花弁の形がハート型
が桜モチーフに必要なキーワードだったことがわかります。
・花弁の数が5枚
を変化させても桜に見えなくなるんじゃないかと思いがちですが
二枚だけ作る(古典型?メジャーな形ではありますが絵巻などでは発見できず)
花弁をピックアップした印象になります。
三枚だけ作る(メジャーな形を自分なりにアレンジした物)
簡略化されてるんだなと感じます。
一枚だけ花弁を減らした物は「作り忘れた?間違えた?」と思われてしまうのでやめておいた方が無難だと思います。
次に
・花弁の色が薄桃色
じゃないとどうなるのか
簡単な画像編集でのやっつけですが、好き嫌いは別れると思いますが見えないことはないです。
他にも市販の抜型を使って遠目から見た感じの物
位置が悪くてバランスが悪くなってしまいました(ーー゛)
今回は説明なのでその辺の吟味はしません。
市販品と言う事でオリジナル感は出にくいです。
アルミ板や3Dプリンターでオリジナルの抜型を作れるのでそういった物を使えばそれこそ世界に一つだけの物が作れます。
↑アルミ板で嘴の抜型を作ってデザインした鳥和菓子
次に水仙
古典型
・ラッパ型の花弁と言うキーワードを外した物
これはすっかり別物ですね。
水仙と言い張るのは厳しいかと思います。
花弁の数を減らした物も自分なりに作ってみました。
つばきで近い形があるため差別化のために細かい筋をいれてみました。
抜型で作ったもの
抜型を使うとどうしても似た印象になってしまいますが組み合わせや枚数によってオリジナル感を出せたりもします。
↑桜と星の抜型を組み合わせて製作した誕生花ブーゲンビリアと菜の花の抜型を使用したタイム
次にデザインを考えて作る方法です。
(デザイン画を描く)と記載しましたがなんで()かと言いますと、私はデザイン画を描かないからです。
本物を見て描くのさえ色のグラデーションや丸みや凸凹の表現が難しいのに頭の中にある和菓子のデザインを描き出すって言うのはかなり難易度が高い。
簡単な物を描けばいいのかもしれないですが、描き出した物にイメージが引っ張られてしまって私には合わなかったです。
描いた物を見ながら作ると微調整が出来ないと言いますか…
でもデザイン系の物はデザイン画を描く物だと思うので描ける方は描いてください。
では以前私が考えた思いで深いデザインを使って説明していきます。
①大まかなデザインを考える(デザイン画を描く)
上記の理由によりデザイン画は省略。
制作する物は「秋」を題材にしたものです。
秋→収穫の秋→「籠で収穫した野菜」
をイメージしました。
②モチーフの特徴を展開していくつかのキーワードにする
籠で収穫した野菜をキーワードにします。
・籠
・野菜が乗ってる
以上です。
デザインを考えた物は展開する必要がないかもしれないのでイメージ→和菓子の技法を当てはめる
でもいけるかもしれません。
③必要なキーワードを和菓子の技法に当てはめる
籠は籠鮎の籠を使用、野菜は丸めて作ります。
こんな感じになります。
これは和菓子屋に入って半年もたたないくらいでデザインしたものです。
今見ると荒がありますが(カブとか冬だし)当時は渾身の出来!!と息巻いてました。
しかし受けた評価は「こんなふざけたアホみたいな物作りやがって!」でした。
ちょっと落ち込みましたね。
大真面目で作りましたし、かわいいって思って作ったわけですから。
だったら入って半年もたたない奴にデザイン考えさせるなよ、考え方も習ってないし…とふてくされてみたり。
大口のお客様へデザインを提出するものだったのですが、そこまで言っておいて何故かこれをお客様に持って行きました。
他の人のデザインも合わせて10個。
その中からお客様が選んで大口で制作をすることになっていて
なんと!これが選ばれました!!!!
もうひゃっほーーーいですよね(^v^)
ざまぁみそづけー!わかる人にはわかるんだよ!おしりペンペンωωωと調子に乗ってみたり。
でもすぐに自分がアホだと言うことに気がつきました。
「こんなめんどくせーの、お前が考えたんだから籠は作るけど野菜はお前が作れよ!」
と言われ延々とカブとニンジン作り300個…
超つまらないんです。
1個2個だと楽しいのですが300個は…
「ワイはアホや…」とエセ関西弁が出てくるくらい大変な作業でした。
※ここで粘土和菓子をより和菓子に似せるためのコツの紹介「なるべく手に持っている時間が短くなるようなデザインにする」
本物は作業工程が少ないほど良いデザインと言うことになっています。
多くの数を作りますから一つに時間はかけていられません。
上記の古典桜なんかだと、餡切り、包餡、成形を合わせても2分くらいしかかかりません。
あまり長いこと手に持っていると手の熱で練りきりがどんどん悪くなりますし。
と言いつつ誕生花ではモチーフの関係上色々ルールを破って作っていたりしますが、なるべく守った方が和菓子っぽさが増します。
技法にあてはめるあてはめる言ってますが技法はこんな感じになってます。
↓文字で説明するのが難しかったので昔技法紹介動画を作ってました。
カメラがあまりよくなかったり名前のわからない技法があったりと完成度は高くはありませんがなんとなくはわかるかと思います。